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参議院の平成18年度決算の議決

 参議院決算委員会は平成18年度決算について議決した20年6月10日の委員会で内閣に対して警告すべきものとする議決案の決議を行わず、また、平成15年度決算以来行ってきた決算審査措置要求決議も行わなかった。当然、20年6月11日の本会議でも警告決議は議決されなかった。これについては参議院常任委員会調査室・特別調査室が編集・発行している参議院議員向けの調査情報誌「立法と調査」の284号[平成20年8月4日]に掲載された「15年ぶりの決算否認(平成18年度決算審査) 〜決算の議決に係る今後の課題〜」(PDF file 65KB)に説明がある。 この説明には「最終的に議決に至らなかったものの、決算委員会理事会において、議決案の取扱いに係る協議と並行して、内閣に対する警告及び措置要求決議の準備が進められた。その案文は、決算委員会における討論において、民主により読み上げられ、政府はこれに係る是正改善の自主的取組と報告を促された」とされている。この民主の読み上げは平成20年6月10日の参議院決算委員会の民主党神本委員による討論の締めくくりに次のように出てくる。
 最後に、内閣に対する警告及び措置要求決議について一言付言したいと思います。
 本来、決算審査の意義、目的は、予算執行を検証、分析、評価し、その結果を予算編成に反映させることであります。内閣に対する警告や措置要求決議は、決算審査の過程で明らかになった政府の失政や無駄遣いなどを指摘し、院として政府に対し是正改善措置を求めるものであり、決算の是認否認にかかわらず、チェック、再考の府として参議院決算審査をより有意義なものとするために、これは極めて重要なものであります。
 かつて、決算が是認されず、警告決議が行われなかった時期がありました。しかし、今述べたような決議の重要性から、当時の自民党以下すべての会派で構成された参議院制度改革検討会は、平成八年十二月の答申において、警告決議の議決について改善すべきであるとし、その改善方法として、「政府の責任を明確にするため、決算の是認否認にかかわらず、警告決議を行うことができるものとする。」ことを明確にうたっております。
 この全会派一致しての答申を尊重し、今回は是非これを実現すべきでありました。決算を是認しない場合は警告もすべきでないとする与党の姿勢は、与野党を超えて積み上げてきた参議院決算の充実サイクルを崩し、二十年前に逆行させるものであり、全く納得できません。
 そこで、この場を借りて、本来、委員会として議決すべきであった決議の案文を読み上げさせていただきます。
 内閣に対し、次のとおり警告する。
 内閣は、適切な措置を講じ、その結果を本院に報告すべきである。
 中国における遺棄化学兵器処理事業については、随意契約によりコンサルタント会社パシフィックコンサルタンツインターナショナル(PCI)グループの株式会社遺棄化学兵器処理機構に一括発注されていたことに加え、かかる事態が政府開発援助事業におけるPCIの不正判明後も改められなかったことは、遺憾である。
 政府は、本件に係る水増し請求など詐欺容疑で逮捕者が出たことも厳しく受け止めて、これまでの事業執行体制を抜本的に見直し、契約を競争性のある方式に改めるとともに、事業の進捗、委託等の状況を厳格に管理し、遺棄化学兵器処理事業の円滑な実施に向けてなお一層尽力すべきである。
 、文部科学省において、文教施設担当部局の責任ある地位にあった者が、その在職中に民間建設会社社員に対し、国立大学法人等の施設整備事業の情報を提供するなど特段の便宜を図り、その謝礼として金品を収受し、入札の公正さに疑念を生じさせた上、収賄容疑で逮捕・起訴されたことは、遺憾である。
 政府は、早急かつ徹底した調査に努め、制度及び組織等の構造的要因も含めた徹底的な分析並びにこれに基づく再発防止のための抜本的な改善措置を実施するとともに、綱紀粛正に万全を期し、行政に対する国民の信頼回復に尽力すべきである。
 年金記録問題に関して、平成二十年三月までに終了したコンピュータ上の突合せの結果、解明が困難となっている記録が依然として約二千二十五万件も残っていることはもとより、記録が結びつく可能性がある者に対して発送した「ねんきん特別便」について、回答率が約五割にとどまり、また、記録の訂正なしとの回答のうち電話や戸別訪問による再照会により記録の訂正に結びついた事例が多数となっているなど、百五十八億円を要した「ねんきん特別便」が必ずしも十分な効果を上げていないことは、遺憾である。
 政府は、公的年金制度への国民の信頼を回復するため、発送した「ねんきん特別便」について十分にフォローアップを行い、「ねんきん特別便」がより効果的、効率的なものとなるよう取り組むなど、年金記録問題の根本的な解決に万全を期すべきである。
 道路関係業務の執行に当たって、基準が明確でないタクシーチケットの使用、所管公益法人へのずさんな業務委託などコスト意識を欠いた不適切な支出に加え、ミュージカル上演などの広報広聴経費、職員のためのマッサージチェアの購入など道路特定財源の趣旨に合致しない支出が相次いで明らかにされたことは、極めて遺憾である。
 政府は、道路関係業務の執行の在り方に関する報告の厳正な実施に全力を挙げて取り組み、支出の無駄を徹底的に排除し、国民の信頼回復に努めるべきである。
 、政府の随意契約見直し計画を受けて、所管公益法人等との随意契約を競争性のある契約方式に改めることとしていたにもかかわらず、国土交通省が平成十九年四月から七月の間に締結した千八百十八件の公募方式の契約において、応募要件として事実上民間参入を閉め出す過去の受注実績等を求めるものがあったことなどの結果、すべての契約が所管公益法人等の一者のみの応募となるなど、政府の随意契約見直し計画の趣旨に反する事態が生じていたことは、極めて遺憾である。
 政府は、「国土交通省における随意契約の総点検、見直しについて」の厳正な実施に全力を挙げて取り組むとともに、各府省における所管公益法人等との契約に関して競争性の確保に努めるべきである。
 防衛装備品の調達に関して、複数の契約企業から過大請求を受け、平成二十年三月末現在で約十億円を超える公金が不適正に支出されていたことは、遺憾である。また、平成十二年度に旧防衛庁が実施した装備品の調達において、株式会社山田洋行から約一億九千万円の過大な請求を受けながら同社に対する処分が行われなかった事案が明らかになったことは、看過できない。
 政府は、本件に係る調査を早急に完了させ、公金の返還を求めるなど適切な対応を行うとともに、防衛装備品の調達における審査体制の強化、価格妥当性の調査機能の強化、過大請求に対する処分の厳格化に努めるなど再発防止に万全を期すべきである。
 次に、措置要求決議案です。
 内閣及び会計検査院は、本決議を踏まえ、適切な措置を講じ、その結果を参議院決算委員会に報告すべきである。
 一、各府省所管公益法人の内部留保の見直し及び国庫への納付等の検討
 公益法人の内部留保に関しては、「公益法人の設立許可及び指導監督基準の運用指針」により「三〇%程度以下であることが望ましい」とされている。しかしながら、平成十八年十月一日時点で、国所管の公益法人六千七百七十六法人のうち約四割の法人がこの水準を超える内部留保を有している。
 現在、国土交通省所管の道路関係公益法人については、内部留保の徹底的な見直しを行い、その活用を図るとの方針が打ち出され、政府全体でも、行政と密接な関係のある公益法人について内部留保の適正化を図る方針とされている。
 政府は、公益法人の内部留保の見直しに関するこれらの方針の実施に努め、基準とされている三〇%を超える内部留保については、国庫へ納付することを含め、真に公益的な目的に活用することを早急に検討し、各法人の内部留保の状況とともに、その結果を公表すべきである。
 二、行政文書の管理体制の是正
 毎年、保存期限を迎える行政文書の大半が国立公文書館に移管されずに各府省にとどまっており、歴史資料として蓄積されていない。また、薬害肝炎資料の倉庫放置、自衛艦航泊日誌の誤廃棄など、不適切な文書管理の実態も明らかになっており、さらに、タクシーチケット等の会計資料のずさんな管理など、行政文書の重要性を軽視する事態が見受けられる。
 政府は、各府省における行政文書の不適切な管理体制を見直した上で、文書管理の重要性について意識改革を徹底し、取扱い改善に向けた取組を着実に実施することにより、会計資料を含め、記録を残す必要がある行政文書の適切な管理及び保存に努めるべきである。
 三、特別会計の剰余金及び積立金の更なる活用等
 特別会計の剰余金等に関し、政府は、平成二十二年度までに総額二十兆円程度の財政健全化に寄与するとの目標を掲げ、その活用に取り組んできたところであるが、平成十八年度の決算においても、剰余金は総額五十・九兆円、積立金・資金の残高は総額二百三・八兆円と依然として多額に上っている。特に、剰余金は、予算上の見込み総額三十二・四兆円を大きく上回り、剰余金の決算額が予算額を上回る状況は恒常化している。
 政府は、厳しい財政状況にかんがみ、剰余金及び積立金等の必要額を改めて検討し、更に剰余金等の活用を図るべきである。また、予算編成に当たっては、前々年度の決算を参考に綿密な見積りを行うことにより、過大な剰余金が生じないよう努めるべきである。
 四、委託費の適正な執行の確保
 各府省が支出する委託費は毎年度多額なものとなっており、平成十八年度における支出総額は約六千七百八十六億円に上っている。
 しかし、厚生労働省が実施した労働関係調査委託事業における著しく適正を欠く会計経理地域労使就職支援事業等における受託者による委託費の流用など、委託費の取扱いに問題のある事態が明らかになった。また、委託契約について、契約内容の履行の確認等が適切に行われていないほか、受託者による不正に対して十分な対応がなされていない事例も見られる。
 政府は、毎年度多額の支出がなされている委託費に係るこうした事態を踏まえ、契約内容の履行等に係る内部の確認体制の確立を含め、委託契約の取扱いに関する指針を検討するなど委託費の適正な執行の確保に努めるべきである。
 五、公立学校等施設の耐震化の促進
 我が国の公立小中学校施設の耐震化率は、平成十九年四月一日現在、約六割にとどまり、依然として耐震性の確保されていない校舎等が数多く存在している。そのため早急かつ確実な耐震性確保の取組が求められているものの、厳しい地方財政事情等からその整備が遅れている。
 政府は、耐震診断の完全実施達成を促すとともに、耐震補強や改築に対する補助率のかさ上げ、地方への交付税措置の拡充、私立学校への配慮など総合的な支援施策を拡充し、耐震性の確保に万全を期すべきである。
 六、道路橋の補修及び定期点検実施の促進
 国土交通省が全国の道路橋を平成十九年九月に調査した結果、国直轄の一万二千六百橋のうち、約四割に当たる四千八百橋で速やかな補修を必要とする重度な損傷が見付かった。また、市町村が管理する道路橋については、技術者の確保が困難なことや厳しい財政状況にあることなどから、八三%の市町村が定期点検すら実施していないことが明らかになった。
 政府は、損傷が見付かった道路橋の補修を速やかに実施するとともに、数年後には全体の二割に当たる約三万橋が建設後五十年以上となることから、点検の制度化を図るなど予防保全システムを早急に構築すべきである。また、市町村において道路橋の定期点検及び補修が確実に実施されるよう、市町村への技術的、財政的支援に努めるべきである。
 七、不当事項に係る返還の徹底及びその状況の公表
 毎年度の決算検査報告に掲記された不当事項に関し、国等への返還、徴収不足等の是正の措置が完了していないものがあり、平成八年度から平成十七年度までの不当事項に関して、その額は八十三億円に上っている。このうち、国等に返還すべきものは七十五億円あり、所定の期日までに返還することが約定されている。
 政府は、公金を適正かつ有効に使用するため、不当事項に伴い国等に返還すべきとされた金額について確実な返還がなされるよう適切な措置を講ずるとともに、返還状況を定期的に公表すべきである。また、会計検査院は、返還状況について毎年度の決算検査報告に掲記するよう検討すべきである。
 以上が十八年度決算についての決議案の内容であります。
 これらの内容は充実した審査を行った結果明らかになったものであり、本来、委員会として決議を行い、翌年、政府からこれら決議に関して講じた措置について説明を求め、より効率的な予算執行を促すべきものです。
 それにもかかわらず、今回決議を行わなかったことは、決算審査重視の本院の取組を後退させることになりかねず、大変遺憾であります。
 したがって、本委員会としては、政府に対して、今読み上げました決議案に基づく是正改善の自主的取組と報告を促し、次年度以降の決算については、今回の取扱いを前例とすることなく、決算の是認否認にかかわらず、警告決議及び措置要求決議を行うべきであるということを強く申し上げ、私の討論を終わります。
 以上です。
 上記によれば、内閣に対する警告決議案は次のように整理できる。
  1. 中国における遺棄化学兵器処理事業
  2. 文教施設担当部局における収賄容疑
  3. 年金記録問題
    20年6月検査要請「年金記録問題について」
  4. 道路関係業務の執行
    20年6月検査要請「国土交通省の地方整備局等における庁費等の予算執行について」
  5. 各府省における所管公益法人等との契約
    20年6月検査要請「各府省所管の公益法人の財務等の状況について」
  6. 防衛装備品の調達
    20年6月検査要請「防衛装備品の一般輸入による調達について」
 また、18年度決算審査措置要求決議案は次のように整理できる。
  1. 各府省所管公益法人の内部留保の見直し及び国庫への納付等の検討
     →20年6月検査要請「各府省所管の公益法人の財務等の状況について」
  2. 行政文書の管理体制の是正
  3. 特別会計の剰余金及び積立金の更なる活用等
  4. 委託費の適正な執行の確保
  5. 公立学校等施設の耐震化の促進
  6. 道路橋の補修及び定期点検実施の促進
  7. 不当事項に係る返還の徹底及びその状況の公表


 そして、これらの決議案は、財務省サイトの予算の説明「徹底した予算の効率化」では、決議と同様に扱われている。ここの「国会の議決・決算検査報告等の反映状況」の「国会の議決等の反映」では、18年度決算審査措置要求決議案などが18年度決算審議指摘事項と表現されており、過去の警告決議と同様の表現を与えられている。具体的には「特別会計の剰余金及び積立金の更なる活用等について」の項で18年度決算審議指摘事項として記述されているものは、上記の決算審査措置要求決議案の第3項目のそれであり、「公益法人等の資金の見直し及び事業の再点検について」の項で「16年度決算審議指摘事項」として記述されているものは16年度決算における内閣への警告決議の第4項目のそれであり、「随意契約見直しの趣旨に反する入札参加条件の限定等について」の項で「18年度決算審議指摘事項」として記述されているものは上記の内閣に対する警告決議案の第5項目のそれである。

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