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公会計の整備


 問題の所在 国会質疑 

 問題の所在
 公会計については、民間経営者の自治体経営への参画が端緒となって企業会計的表示が求められるようになり、国においても逐次導入が進められてきている。公会計においては、一物二価の状態を想定しがたいこと、特定時点での資産・負債差額に積極的意味が無い(継時的にも債務総額以上の意味は見い出し難いところです。)ことから、公会計を複式簿記で処理することについては否定的意見も強いところであり、費用対効果を慎重に見極める必要があるところではあるが、公認会計士の職域拡大という側面があるところから、国会においても公認会計士資格を有する国会議員による質疑が行われてきている。


 国会質疑
 参議院の20年度決算の審査では、23年2月14日の全般質疑でこの議論が行われている。
○若林健太君 〔前略〕
 そのことを一言申し添えて、次に公会計に関する考え方、考察に移りたいと思います。
 国の財務書類についてでありますが、我が国の公会計の歴史は明治二十二年に制定された収支計算書をベースとする官庁会計に原点があって、現金主義、単式簿記によって行われてまいりました。その後、実はずっとこの会計についての改正というのは、大きな改正が取り組まれてこなかったんですけれど、平成十八年六月に財政制度審議会から出された「公会計整備の一層の推進に向けて 中間取りまとめ」だとか、骨太方針二〇〇六などの指摘によって複式簿記のシステム化、財務書類公表の迅速化というものが取り組まれているというふうに承知をしております。
 今、直近の財務書類は平成二十年度分で、これが公表されたのは実は平成二十二年六月なんですね。実に会計年度が終わってから十五か月たってようやく公表されているという状態でございますが、今取り組まれている新システム、これによってそれがどのように改善をされてくるのか、そのことについてお伺いしたいと思います。
○国務大臣(野田佳彦君) これはやっぱり一つの契機は平成十五年度だったと思うんですが、その平成十五年度の決算分から毎年作成、公表をするようになりました。そして、その早期化に努めてきているところでございまして、今新しいシステム、今は運用試用中というところでございます。それを検証をさせていただきながら、二十三年度の分については翌年のすぐに公表できるような、そういう段取りでいければいいなという思いで準備をさせていただいているということでございます。
○若林健太君 財政制度審議会の議事録を見ますと、新システムによって翌年の一月を一つ大きな目標にしたいというふうに出ておりまして、そうなると、今までの十五か月から九か月ということで大きく改善をされるということだと思うんですね。しかし、参議院改革の中で議論がありましたように、次の予算編成に資すると、こういう意味でいえば、翌年の一月というのではまだまだ遅いと、こういうことだと思うんですね。
 アメリカ政府は、毎年九月三十日、九月末が貸借対照表日になっておりますけれども、省庁別財務諸表の多くは三か月後、十二月末に公表をされていて、連結財務諸表は三月末、六か月後に公表するようになっているんですね。
 東京都も平成十八年度から発生主義・複式簿記会計というのが導入をされて新財務会計システムが稼働されているわけですが、これによって三月末決算が九月末までに公表されると、こうなっているところでございます。新システム導入後もなお九か月を要するというのが残念ながら今の国のレベルでございまして、新システムとこの東京都システムとの、どうしてこんなに違ってしまうのかというところについて概略をお教えいただければと思います。
○国務大臣(野田佳彦君) 東京都では平成十八年度から、日々の会計処理の段階から複式簿記と発生主義を導入するとともに、建物等の公有財産システム等のほかの財務情報と連携したシステムにより財務書類を作成をしているというふうに承知をしています。
 一方で、財務省で今現在開発中のシステムというのは、官庁会計システムとの連携のほか、国有財産システムとの連携を図ることとしていますが、他の財務情報、例えば物品情報などとはシステム連携は現時点では予定をされていません。より迅速に、また、よりほかの情報と連携するようにすることは、それにこしたことはないと思うんですけれども、国の事業というのは多岐にわたっておりまして、またその規模が全国に及び膨大でございますので、東京都のようなシステムを開発するには、それはやっぱり費用対効果も含めてよく検討しなければいけないのではないかなというふうに思います。
 いずれにしても、今の段階の、今のシステムの中ではできる限り早くということをやりますが、その先のバージョンアップはまさに費用対効果を考えた議論になるんではないかと思います。
○若林健太君 まさに、今お話をいただいた固定資産会計についてどうするのか。これは国に限らず、民間の決算を早期化するという取組の中でも実は固定資産管理と財務会計の中での固定資産の在り方というものの統合というのは非常に大きなシステム設計上のテーマになっていくんですね。ここへ手を付けないと、実は国の新財務会計システムも迅速化というのはなかなか図れないんではないかなと、こんなふうに思います。
 ただ、目的はただただ早めるということだけが目的ではなくて、やっぱり次の予算編成に資していくということが本来決算の在り方だと、こういうことで早期化を取り組んでいるわけでありますから、一月になったからよしと、こういうわけにはまいりません。
 改めて、私はやっぱりひとつ九月というのを大きな目標に置くべきだと、こんなふうに思いますけれども、システムというのは、まず大きな制度設計をしたら、都度バージョンアップを進めて、努力をしながら進化していくものだというふうに思いますし、そういう早期化に向けての決意というのをひとつお伺いしたいというふうに思いますが。
○国務大臣(野田佳彦君) 現段階は、だから平成二十二年度は今試行運用を新しいシステムの下でやらさせていただいて、次の実験はまさに平成二十三年分を翌年の一月に出すということを目標に頑張ります。その上で、いろいろと検証をさせていただきながら、ほかとの情報等の連携とかもっと早期化できるかどうかとか、さっき申し上げたように、ちょっと費用対効果もございますが、そういうことも含めて検討させていただければというふうに思います。
○若林健太君 財政制度審議会の議事録の中でも、国の国有財産の管理システムと固定資産管理システム等の統合と、検討していきたいということが出ております。是非、ここはひとつ大きな目標を掲げて、その着地点に向かってひとつ大きなバージョンアップ、努力を引き続きお願いをしたいと、こんなふうに思います。
 我が国の公会計についてひとつお話をさせていただきたいと思いますが、我が国の公会計は、国の会計基準というのはこれ財務省が、地方自治体については総務省、各地方自治体は実は総務省方式と東京都方式ということでばらばらになっております。さらに、非営利法人の会計についてはそれぞれの省庁が、所管する省庁が会計基準を作ると、こういうことで実は各省庁縦割りで会計基準が設定をされているというのが実態なんですね。そのことによって、実は利用者にしてみると法人ごとによって会計基準が全然違うと、こういう状況が今放置されているということになってございます。
 世界的に見ると、国際会計士連盟が国際公会計基準、IPSASというのを既に公表しておりまして、ここへの整合性というのが常に問われるわけですけれども、現状は各省庁が断片的にそれを取り入れてくると、こういう状況になっています。
 関係者が一堂に会して、常設のやっぱり公会計の設定主体というものを是非設置する検討をするべきではないかと、こんなふうに思いますけれども、大臣の所感をひとつお伺いしたいと思います。
○国務大臣(野田佳彦君) 視点として二つ内容的には御質問の中に趣旨があったと思います。国と地方の問題と国際会計との関係ですよね。
 まず、国と地方の関連なんですが、まず地方がこれ実は三つなんです。基準モデル、それから総務省モデル、総務省改訂モデル、おっしゃったように東京都はまた独自ということでございますので、これはそれぞれが自治体が自由に選択できるようになっていますので、まずここのところが整理されないと国と統一という形もなかなか進みにくいのではないかなというふうに思います。
 ただ、おっしゃったとおり、公会計はやっぱり一つの物差しで測っていった方が特に国民サイドから見た場合には分かりやすくなると思いますので、これは関係省庁、総務省や地方とも連携をしながら、これ一つの課題だと思いますので、今後検討をさせていただきたいというふうに思っております。
 それから、後段の方はIPSASのお話がございました。これはIPSASの考え方も、今例えば財務省が取り入れている考え方で相当取り入れているつもりではございます。ただし、それを丸々取り入れられるかというと、IPSAS自体もまだ成長段階というか完成形にはなっていないところがあると思いますので推移を見ていきたいと思いますし、特にIPSASの場合は、年金給付などの社会給付の計上方法等、まだ様々な検討課題が残っております。
 また、我が国の会計制度に照らして十分な検討をする必要もあるかと思いますが、一つの御提言だと思いますので、今すぐにそれを取り入れることは困難だと思いますし、日本だけではなくて、アメリカやイギリスもまた独自の会計でやっておりますので、そういうことも踏まえながら研究はさせていただきたいというふうに思います。
○若林健太君 前向きな答弁をいただいて、大変有り難いと思います。
 IPSASについては御指摘のとおりで、丸々受け入れるということが決していいことだというふうには思いません。ただ、その設定主体であるIFACに今ボードメンバーとして出ているのは公認会計士協会、日本の場合は公認会計士協会からメンバーが出ているわけであります。常設した設定主体にそうしたメンバーが入ることによって、全体としてIPSASをどうやって取り込んでいくのかと、こういう議論ができるんではないかと、こんなふうに思いますので、設定主体について、それを検討する段階でまた考慮していただければというふうに思います。
 再び、決算審査の今度は早期化ということで会計検査院に主にお伺いしたいと、こんなふうに思いますが。
 決算審査の意義は、先ほどもお話ししたように、予算執行状況を審査して、適正な業務執行がされているか、適法性、有効性などを確認すると同時に、次年度の予算編成に反映をさせるということが重要だと、こんなふうに思います。ところが、今現在の決算の手続でいきますと、九月に決算組み上がった上で二か月間会計検査院の検査を行って、ようやく十一月二十日に提出をされる、国会に提出されると、こういう状況ですが、この二か月間でどのような取組がされているのか、会計検査院にお伺いしたいと思います。
○会計検査院長(西村正紀君) お答えいたします。
 検査院の検査報告は、決算額の確認と、それからもう一つは、全国各地の実地調査をいたしましていろんな不当事項とか意見表示等の指摘事項を取りまとめると、検査結果の取りまとめという、この二つから成っております。
 今、九月というお話でございますが、決算額の確認の方について申しますと、九月に内閣から決算書を受領いたしますけれども、検査対象である会計機関、それから日本銀行等から出されました決算書の計数を全て漏れなく一致するよう確認するという作業がございます。そして、その過程で機械化とか定型化、並行処理ということは行っておるわけでございますけれども、中でそれぞれに数字が不一致というようなものが疑われるようなものがございますと、それを一つ一つ確認をしていくという作業でやはり時間が掛かるということがございます。
 それからもう一つ、検査報告につきましては、検査結果の取りまとめというのがございます。これは、当該年度の十月ごろから検査は始めておりますけれども、やはり三月末等に事業年度の終わりのころのものについても検査をする必要がございます。したがいまして、地方の検査は翌年の六月ぐらいまで掛かります。そして、その後、本省の検査を行い、それらを踏まえて検査院の中で検討をし取りまとめていくということで、十一月の初めに検査報告を提出しているということでございます。
○若林健太君 その決算の数値の確認の中で、九月末の政府提出のその数字と会計検査院の決算の調整した結果で大きく数字が変わったという実績、過去にありますか。
○会計検査院長(西村正紀君) 結果的にそういうことはございませんが、途中過程で疑義のあるものについては個別にそれぞれ関係機関と調整をしておるところでございます。
○若林健太君 本来は、先ほどのその現場でのチェック等はその期中の中でやるべきであって、それがその翌年度に、三月以降に業務がずれ込んでいるということに実は大きな問題があって、そのことが手続を遅くしていると、こういうふうに思うんですけど、システム監査についての取組、どんなふうに取り組んでおられるか、システム監査技術者あるいは公認会計士が今会計検査院の中にどれぐらい所属されているか、システム監査の取組はどうされているか、お伺いしたいと思います。
○会計検査院長(西村正紀君) システム監査と申しますか、民間の場合の監査と国の会計検査というのは少し違うと思います。
 もちろん、会計検査におきましては各省庁の情報システムについての検査もしております。それに必要ということで、検査院としましても、公認会計士とかシステム監査技術者というような職員、やはり高度な技術を持った職員が必要だと考えておりまして、常勤職員では公認会計士を九人、それからシステム監査技術者五人が今検査院の職員としております。
○若林健太君 会計検査院全体の数からすれば、それぞれ専門家の数、余りにも、九人と五人ということでありますから、どれほどの取組をされているのかなと、こういうことだと思います。
 実は、私は公認会計士として民間で会計監査業務にずっと携わってまいりました。決算の早期化というのは、実は民間は連結決算を導入したときに経験しているんですね。それまでは、三月末決算について、連結の報告というのは七月ごろやっていたものを五月の上旬にする、今までよりも三分の一に期間を短縮しなければいけないと。当時、現場ではそんなことはできっこないとずっと言っておりましたけれども、システム監査を導入をして、期中でやるべきことは期中でやる、現場の不正摘発や何かはとにかく三月末になるまでにやって、期末には数字の、全体の決算の数字のチェックをすればいいと。そうやって、めり張りを付けて業務を分けることによって、実は民間は大きくこうした決算の早期化、実現をした例がございます。
 トヨタ自動車、三月末、世界に広がっている決算を、連結決算、翌々月、五月の上旬には公表するわけで、この間、民間は非常に努力をし、そして様々なノウハウの蓄積がございます。是非、会計検査院もそういう意味で民間のノウハウを取り入れていっていただきたいと、こんなふうに思いますけれども、その点について一言お願いしたいと思います。
○会計検査院長(西村正紀君) もちろん、検査院としましても、民間等で活用できるようなノウハウ等については、これまでもそれぞれ研修等を活用して職員にそういう知識を付けるように努力をしておりますが、またさらに、公認会計士等につきましても、今年度、人事院の支援の下に、企業会計の専門知識を備えている者に絞って採用試験を行っておりまして、そういう努力も今後続けてまいりたいと思っております。
○若林健太君 引き続き、そういう意味での御努力をお願い申し上げたいと、期中と期末、めり張りを付けて、そして目的を持って早期化への貢献をするということを御努力いただきたいと、こんなふうに思います。
 財政法第四十条一項では、翌年度の開会の常会において国会に提出するのを、決算についてです、済みません、財務大臣ですが、国会に提出するのを常例とすると、こういうふうにありますけれども、先ほど来お話が出ていますように、決算の早期化というのは、参議院の取組によって実は十一月二十日というのが、提出するのが常態化しているわけで、それを更に前倒しをしていかなきゃいけないということですが、そういう意味ではもう既に、財政法でここで規定している状況というのは実態が既に先を行っていると、こういう事態だと思うんですね。
 決算の早期化あるいは先ほどの位置付けということを含めて、財政法そのものも、そろそろ新しいこれからの決算の在り方について検討した上で法律そのものも変えていく必要があるんじゃないかと、こんなふうに思いますけれども、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(野田佳彦君) ちょっと主要諸外国とのデータが資料を見ていたら今出てきました。例えば、さっきは決算の計数を確定してからいわゆる会計検査院、検査機関へ送付される期間、時間、で、ほかの諸外国も決算確定してから検査機関への送付期間あるんですが、それを見るとそれほど遜色がないんですね、実は。アメリカのさっき実例をおっしゃっていましたけれども、イギリス、フランス、ドイツ、決算の確定から議会提出までも、それを見てもそれほど遜色あるとは思わないんです。
 ただ、これはやっぱり不断の努力でなるべく早く早くというのが委員の御趣旨だと思いますので、その法改正までは視野に入れるかどうかは別として、今は、現段階でやれることは最善を尽くしていきたいと思いますが、法改正となるともっと広い議論、大きな議論が必要ではないかなというふうに思います。


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