〔このサイトは xrea 様御提供の広告(↑)付き無料レンタルサーバー上に構築されています〕

日本の財政管理>内部統制

日本の財政管理における内部統制

 内部統制は、意図的であるか否かは別にして、組織であるからには必ず存在する、いわば組織を組織たらしめているものである。組織とは、役割を一定期間分担して遂行することで一定の目的を達成する又は達成し続けようとする複数の構成員から成る集団であり、その存立基盤は、(1)構成員による目的の共有、(2)分業により目的が効率的に達成されること、であり、組織の持続可能性は組織目的の達成度に係っている。そして内部統制とは、組織目的の達成可能性を向上させて組織の持続可能性を確保するために、構成員が分担した役割を確実に遂行することを相互に確認しようとする意識的な構成員の努力である。
 一方、いわゆるCOSOフレームワークで目的とされている、(1) 業務の有効性・効率性、(2) 財務諸表の信頼性、(3) 関連法規の遵守、の三つは、それぞれ、(1) 組織目的達成に有効であるように、また、効率的に組織目的を達成できるように組織内分業(業務)を行う、(2) 対外取引を円滑に行うために、財務諸表が信頼できるようにする、(3) 組織の持続可能性が外部の介入によって妨げられることのないように構成員が外部規範を遵守する、必要があることに由来している。すなわち、組織のために必要な内部統制は、直接的な組織存続のためには意識的に行う必要は少ないものであるが、現在問題となっている内部統制は、外部にその存在を公表するためのものであり、内部統制が機能していることを明らかにすることによって組織の持続可能性が確保されていることについて社会的認知を得ようとするものである。であればこそ、そこで構成要素とされている「統制環境」「リスクの評価」「統制活動」「情報と伝達」「監視活動」は内部統制を評価する基準とされている。

 日本の財政管理における内部統制は、2段階で考えることができる。
 一つは国庫所管庁としての財務大臣による内部統制であり、いま一つは予算執行庁としての各省各庁の長による内部統制である。  まず、各省各庁の長による内部統制についてみると、財政法第31条第1項は次のように、日本の財政管理における予算執行の責任が「各省各庁の長」にあることを示している。

第31条第1項 予算が成立したときは、内閣は、国会の議決したところに従い、各省各庁の長に対し、その執行の責に任ずべき歳入歳出予算、継続費及び国庫債務負担行為を配賦する。

 ここでいう「各省各庁」は財政法第21条に定められており、「各省各庁の長」は財政法第20条に定められている。

第20条第1項 財務大臣は、毎会計年度、第十八条の閣議決定に基いて、歳入予算明細書を作製しなければならない。

第20条第2項 衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官、会計検査院長並びに内閣総理大臣及び各省大臣(以下各省各庁の長という。)は、毎会計年度、第十八条の閣議決定のあつた概算の範囲内で予定経費要求書、継続費要求書、繰越明許費要求書及び国庫債務負担行為要求書(以下予定経費要求書等という。)を作製し、これを財務大臣に送付しなければならない。

第21条 財務大臣は、歳入予算明細書、衆議院、参議院、裁判所、会計検査院並びに内閣(内閣府を除く。)、内閣府及び各省(以下「各省各庁」という。)の予定経費要求書等に基づいて予算を作成し、閣議の決定を経なければならない。

 ちなみに、例えば、国有財産法も次のように規定している。

第4条第2項 この法律において「国有財産の所管換」とは、衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、各省大臣、最高裁判所長官及び会計検査院長(以下「各省各庁の長」という。)の間において、国有財産の所管を移すことをいう。

第5条 各省各庁の長は、その所管に属する行政財産を管理しなければならない。

 もとより、各省各庁は階層構造をなしており、それぞれの階層において内部統制が行われている。そのような各省各庁の内部統制を内部監査の観点で整理したものとして会計検査院の14年11月のレポート「国の機関が内部監査として実施する会計監査の状況について」がある。
 ただし、このような各省各庁における組織統制は、企業における内部統制が企業活動の持続可能性のために対外説明の信頼性を得る手段であるのとは性格を異にしており、そこでの内部監査は、内部監査の名に値せず、内部点検に過ぎない、という見方もあり得る。

 一方、財務大臣による内部統制は、内部監査又は内閣の補助としての統制であり、例えば会計法の次の条項に端的に示されている。

第46条第1項 財務大臣は、予算の執行の適正を期するため、各省各庁に対して、収支の実績若しくは見込について報告を徴し、予算の執行状況について実地監査を行い、又は必要に応じ、閣議の決定を経て、予算の執行について必要な指示をなすことができる。

第46条第2項 財務大臣は、予算の執行の適正を期するため、自ら又は各省各庁の長に委任して、工事の請負契約者、物品の納入者、補助金の交付を受けた者(補助金の終局の受領者を含む。)又は調査、試験、研究等の委託を受けた者に対して、その状況を監査し又は報告を徴することができる。

 ちなみに、財務省サイト「予算・決算」のページ〔中身は主計局の業務〕を見ると、「統計・調査等」というコーナーがあり、財政に関する各種の公表物が掲載されているが、そのコーナーにポツンと「公共調達の適正化について(平成18年8月25日財計2017号)」というものが掲出されている。他のものとは標題からして異質であり、その通達をみると、財務大臣が「各省各庁の長」にあてたもので、本文は「今般、入札及び契約に係る取扱い及び情報の公表等について、現在までに取り組んできた措置等も含め、改めて、下記のとおり定めたので、入札及び契約に係る手続きの一層厳格な取扱いを行うとともに、情報公開の充実に努められたい」という組織統制の色が濃いものとなっている。その「記」では、「5 内部監査の実施等」との項を起こし、「(1) 監査を行うに当たっての留意事項」、「(2) 随意契約の重点的監査」、「(3) 監査結果を踏まえた検討」、「(4) 監査マニュアル等の整備」、「(5) 決算検査報告の活用」、「(6) 内部監査の実施状況」、「(7) 決裁体制の強化」を示しており、各省各庁が内部監査をどう行うべきかを示している。

  <参考>
会計検査院と各省各庁の内部統制

リンク・フリー