平成15年度決算議決 (H17.6.7 参議院決算委員会。6.8.参議院本会議)


一、平成十五年度決算は、これを是認する。

二、内閣に対し、次のとおり警告する。
  内閣は、適切な措置を講じ、その結果を本院に報告すべきである。
 1 平成十五年度決算検査報告において、その指摘内容に在外公館における不適正な出納事務、都道府県労働局における庁費等からの不正支出、会計法令の趣旨に反する少額分割による随意契約等の事例が見られたことは、誠に遺憾である。
   政府は、不当事案の根絶はもとより、随意契約を含めた契約の公正性、競争性及び透明性の確保等会計規律の厳正な保持に努めるべきである。
 2 特別会計の歳出規模は純計額でも二百五兆余円と一般会計を大きく上回っており、透明性の欠如、不要不急の事業の実施、多額の不用・剰余金の発生、予算と執行の乖離、政府出資法人等への支出に係る問題等が一部の特別会計において見られることは、看過できない。
   政府は、各特別会計の性格に応じ、事務事業等の見直しとともに、一般会計からの繰入れの抑制、不用・剰余が生じている事業の縮減、事業の実態に即した適切な予算計上等、歳出・歳入両面での一層の合理化を行い、透明性の確保に努めるべきである。
 3 「社会保険オンラインシステム」に係るデータ通信サービス契約において、その経費の積算の検証が不十分であったことは、誠に遺憾であり、また多くの府省のレガシー・システム等IT調達において、随意契約等による契約内容の不透明性など多くの問題が生じていること、加えて政府が当該調達にかかわる決算内容を把握していないことは、看過できない。
   政府は、今後システムの見直しを進めていく中で、不透明な契約内容の徹底的な見直し、汎用コンピュータのオープンシステム化、随意契約から競争契約への移行等の改善を図るとともに、当該調達にかかわる決算内容の検証・評価を厳正に行うべきである。
 4 昨年の北海道警察等に引き続き、愛媛県警察において捜査費等の不正流用疑惑が生じていることは、誠に遺憾である。
   政府は、疑惑の徹底全容解明のため、都道府県警察に対する監査の充実強化を一層図るなど、この種事案の再発防止及び国民の信頼回復に万全を期すべきである。
 5 政府開発援助において、コスタリカ援助事業に係る不正事案のように事業を実施するための再委託契約について適正を欠く事態が見られたことは、誠に遺憾である。
   政府は、不正事案に対しては厳格に臨むとともに、再委託契約手続の見直し、再委託先に関する情報の報告の徹底など監督体制の強化を図り、政府開発援助の適正な実施に努めるべきである。
 6 厚生労働省の「総合的雇用情報システム」については、随意契約により特定会社にIT業務の大半を発注し、発注元の厚生労働省元幹部等が当該会社に相次いで天下っている事実は、看過できない。さらに、一部の職員が所要の承認を経ず当該会社に天下った事実は、誠に遺憾である。
   厚生労働省は、随意契約に係るシステム発注者の受注企業への天下り状況を省内すべてについて調査し、速やか、かつ、厳正に対処すべきである。
 7 社会保険庁において、特定業者との間で会計法令の趣旨に反する随意契約の締結等が行われ、同業者から多数の職員が接待等を受け、幹部職員が逮捕・起訴されるに至ったこと、また興味本位の年金加入情報の閲覧等業務規律の弛緩とも言える事態が多く見られたこと、さらには公金の還流との批判もある監修料の受取があったことは、極めて遺憾である。
   政府は、これらの事案に対し厳正に対処すること等により、綱紀の厳正な保持に努め、あわせて社会保険事業に関する業務については、その組織の在り方をも含め、抜本的に見直すべきである。
 8 核燃料サイクル政策に関し、旧通商産業省が平成六年に使用済み核燃料を直接処分した場合と再処理した場合との費用比較について試算を行っていたが、国会においてその資料の存在を否定し、事実と異なる答弁が行われたことは、遺憾である。
   政府は、このような事実と異なる国会答弁を行ったことを強く反省するとともに、原子力エネルギーの分野においては、政策判断の根本となる重要な資料や情報の十分な開示に努めるべきである。
 9 工業再配置促進法に基づく産業再配置促進費補助金の交付実績は、平成五年度以降減少傾向となっており、またその内容においても、工場誘致に直接的な効果が薄い施設整備にも補助が認められ、加えて整備した施設の利用が著しく低い等の事例が見られることは、看過できない。
   政府は、移転促進地域からの除外を求める自治体があるなどの経済社会情勢の変化をも踏まえ、同補助金を見直すべきである。
 10 国土交通省地方整備局などが発注する橋梁工事の入札において、長期間にわたり談合が行われてきたことは、極めて遺憾である。
   政府は、入札契約に係る競争性・透明性の確保の徹底、業者への指導の強化等により、再発防止と公正な競争の確保に努めるべきである。
 11 西日本旅客鉄道株式会社福知山線において、多数の死傷者が発生するJR発足後最悪の列車脱線事故が起きたことは、極めて遺憾である。
   政府は、事故の原因究明に努めるとともに、これまでの政府における鉄道安全対策の在り方等が十分なものであったかを検証し、また西日本旅客鉄道株式会社に対して、全社的な安全意識の徹底、事故防止のための機器の整備等の安全確保の徹底を求め、再び重大な事故が引き起こされることがないよう万全を期すべきである。
 12 日本航空グループにおいて人的要因により安全上問題のある事案が多発し、他方、航空管制業務において重大な事故につながりかねない事態が発生したことは、極めて遺憾である。
   政府は、航空各社に対して、社員の安全意識の徹底や経営と現場が一体となった安全確保のための取組を強く求めるなど、今後重大な事故が引き起こされることがないよう厳しく指導監督するとともに、航空管制業務については、その業務手法を徹底的に見直すべきである。