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参議院決算委員会平成15年度決算審査措置要求決議
29 産業再配置促進費補助金の見直しについて

 決議内容 決議の背景 決議の位置付け 決議時点での当局の姿勢 決議の効果

 決議内容
 参議院決算委員会の平成15年度決算審査措置要求決議の第29項目「産業再配置促進費補助金の見直しについて」の内容は次のとおりであり、財務省と経済産業省に対する措置要求である。
 工業再配置促進法に基づく産業再配置促進費補助金(以下「促進費補助金」という。)は、工業の再配置を工場等と地域社会との融和等に配慮しつつ促進するため、市町村、道府県及び企業を交付対象者として、工場の移転又は新増設と密接な関係を有する(1)環境保全施設(緑地、公園等)、(2)福祉施設(スポーツ施設等)、(3)その他の施設(販売促進・展示施設等)の整備を対象に交付されている。その交付実績は、初年度の昭和48年度から平成15年度までの累計で約1,271億円となっている。バブル崩壊後の大型経済対策が行われた一時期を除けばおおむね減少傾向が続いており、ピーク時である昭和50年度の約72億円と比較すると、平成15年度は約4億円(予算額約7億円)と1割以下の水準にまで落ち込んでいる。なお、平成16年度予算額では約5億円、平成17年度予算額では約3億円と更に落ち込んでいる。
 促進費補助金については、補助金によって整備された町の研修施設が県内企業の新設した工場から10キロメートルほども離れている、補助金申請のときは存在していた工場が交付のときには倒産していた、また、整備された施設の利用度が見込みに比べ1割以下と著しく低くなっている事例がある等の問題がある。
 さらに、東大阪市及び尼崎市については、市からの要望もあり、構造改革特別区域計画において移転促進地域からの除外に係る特例基準で認定されたことを受け、移転促進地域から除外されており、また、工業再配置促進法で求められている工業再配置計画についても、前計画の終了後、経済産業省において、いまだに策定されていない。
 促進費補助金については、その交付実績が長年減少傾向にあり、また、創設から30年超を経て、経済社会情勢が変化したことをも踏まえ、時代のニーズにこたえるべき政策という意味で柔軟に対応していく必要がある。また、平成17年度の予算執行調査で促進費補助金が取り上げられていることから、その結果をも踏まえ、財務省、経済産業省が十分に協議した上、促進費補助金を見直すべきである。

 決議の背景
 産業再配置促進費補助金については、会計検査院が15年度決算検査報告で「特定検査対象に関する検査状況」の一つとして「産業再配置促進費補助金について」を報告しており、その所見として次のように述べている。
 国土の均衡ある発展を図るための工業再配置に関する諸施策は、制度発足以来30年以上を経過し、経済のグローバル化に対応した企業の競争力強化の必要性、地方分権の進展に伴う地方の自主性の高まりや地域住民の意識の変化など、工場立地等を取り巻く環境は大きく変化している。
 このような状況の中で、本件補助制度は、工業と地域社会との融和を図る上で一定の役割を果たしてきたと考えられる。
 しかし、本件補助金の交付実績は昭和50年をピークとして減少傾向が続き、また、全国の工場立地の状況についても近年では減少傾向が続いている。そして、本件補助金以外の工業再配置関連施策のうち、移転計画の認定は近年実績がなく、また、立地基盤を整備する工業団地の造成施策は既に終了しているなどの状況となっている。また、これらの諸施策を含めて今後の工業再配置の長期的な方向付けを示す新たな工業再配置計画は、前計画の終了後未だに策定されていない状況である。さらに、制度発足当初に懸念された製造業に係る地域社会の公害等に関して、苦情件数については減少ないし横ばい傾向にある中で、制度発足当初に比べ工場誘致に力を入れる地方公共団体が増加するなど、工業再配置に対する住民、企業、地方公共団体それぞれの意識や対応には変化がみられる状況となっており、現在では「過密」と「過疎」という二つの観点のみで、地域が抱える問題が解決できない状況となっていることもうかがえる。
 一方、経済産業省の地域経済施策については、地域の産業クラスターの強化といった地域経済の競争力強化に向けた施策に多額の予算が計上されている。そして、本件補助金を含めた産業再配置等の諸施策の実施については、政策評価基本計画に従い、成果の検証を行って、今後の予算に反映させるとしている。
 したがって、過密と過疎の弊害を背景に創設された本件補助金について、関係各方面の意見等も踏まえつつ、本件補助金の有効性について十分検討するとともに、各種の施策・事業をより効率化・重点化する観点から、適切な評価を行い、今後の経済産業省における地域経済施策に反映させていくことが肝要である。
 この報告を受けて、17年5月16日の委員会で松井孝治委員(民主)が「ですから、ここで私としては、役所の従来の工業再配置法を見ている部署が計画を作っていない、それを、じゃ、本当は法律義務違反じゃないかみたいなことを言うというよりは、やっぱりこれをそろそろいい機会なので見直していくべきではないか。会計検査院の検査の結果も、やはりそれは見直すべきではないか、再考を促していると思います。」という立場で取り上げて質疑を行っている。


 決議の位置付け
 この項目は、内閣に対する警告決議12項目の第9項目として次のように盛り込まれた。
 工業再配置促進法に基づく産業再配置促進費補助金の交付実績は、平成五年度以降減少傾向となっており、またその内容においても、工場誘致に直接的な効果が薄い施設整備にも補助が認められ、加えて整備した施設の利用が著しく低い等の事例が見られることは、看過できない。
 政府は、移転促進地域からの除外を求める自治体があるなどの経済社会情勢の変化をも踏まえ、同補助金を見直すべきである。

 決議時点での当局の姿勢
 そして、決議当日(17年6月7日)の参議院決算委員会では中川経済産業大臣が「ただいまの……それから産業再配置促進費補助金の見直しについて、……の審査措置要求決議につきまして適切に対処いたしますとともに、……産業再配置促進費補助金の見直しについての警告決議につきましては、御趣旨を踏まえ、今後とも一層努力してまいる所存でございます。」と発言している。


 決議の効果
 産業再配置促進費補助金については、財務省主計局が17年4月から6月まで行った予算執行調査で取り上げており、その総括調査票において、「B今後の改善点・検討の方向性」として「本補助金については、廃止を含めた抜本的な見直しが必要」としている。また、18年度予算政府案について発表した「予算の質の向上・効率化努力」では予算執行調査の予算への反映額として2億76百万円を上げ、また、「決算検査報告等の反映状況」として「国会の指摘・決議等」で15年度審査措置要求決議と15年度決算検査報告にあったことを受けて、2億76百万円反映させた旨を記している。
 そして、18年1月25日の委員会で平成15年度決算に関する参議院の議決について政府が講じた措置について財務大臣が次のように説明している。
 次に、産業再配置促進費補助金につきましては、経済情勢の変化に伴い同補助金の政策的効果が低下してきていることから、平成十七年度限りで廃止することとしております。

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