全国農業協同組合連合会(全農)秋田県本部は、平成16年に入ってからの平成15年産米の価格の下落により、入札価格が農家への仮渡金を下回ることをおそれ、卸会社と共謀して高額で落札し、直後に買い戻すという架空取引を行った。これにより引き上げた落札価格を指標価格としてその後の相対取引に反映させたというものである。架空取引分の補助金の不正受給もなされている。 また、同本部は、米の横流し事件も起こしている。全農の100%子会社である(株)パールライス秋田が平成15年度決算において特定の取引先からの米代金の入金が滞り債務超過の懸念が生じたため、農家から販売委託されている米を横流しして簿外で販売し、赤字を埋めたというものである。横流し分についての補助金の不正受給もなされている。
全農は、この2件の以前にも、平成13年からの短い期間に、食品の偽装表示等8件の不祥事を起こし、農林水産省から6回の業務改善命令が出されている。
政府は、今回の2件の事件について厳正に対処するのみならず、不祥事を相次いで起こしている全農に対し、今後二度と不祥事を起こすことがないよう猛省を促すとともに、その事業を抜本的に見直す必要がある。
不正受給が発生した全農向けの補助金についても、受給方式の見直しを検討する必要がある。
また、米の架空取引事件については、背景に米取引の構造的な問題もあることから、公正な米取引の実現及び価格形成の適正化に向けて、取引ルールを検証するとともに、コメ価格センターへの上場数量の増加、取引結果の透明性の向上、不正行為に対する監視の強化等について検討する必要がある。